《 2023年6月3日、24日 》
2023年6月3日と24日の二日間、ふだんはアポイントメント制のFRAGILE BOOKSのアトリエを開放し、彫刻家の飯田竜太さんを迎えてオープンデイを開催しました。
駆けつけてくださった方は、デザイナーの林里佳子さん、ウェブデザイナーの萩原俊矢さん、グラフィック・デザイナーの山口信博さんをはじめ、職業も年齢もさまざま。初対面のご相席にも関わらず、普段から大学で教鞭をとる飯田さんのたくみな話術で、終始和やかな雰囲気に包まれました。今回のOpen Dayは、FRAGILE博覧会「SILENT BOOK / サイレントブック」企画の一環として開催。当日は最新作のサイレントブックに至るまでのお話しをたっぷりと伺うことに。
そもそも「彫刻」なのになぜ紙なのでしょうか、という参加者からの質問からスタートした初回では、学生時代に新聞の勧誘を断りきれず、しかも日々溜まっていく新聞の束を捨てることができなかった...という衝撃的なエピソードからの展開でした。新聞が捨てられないのですから、もちろん本や雑誌など論外。そんなパーソナルな事情と、彫刻家としての素材選びがまさかの合致、役目を終えた本や紙媒体を「自分のところでおしまい」にすることを思いついたのだとか。
そう、飯田さんの本の作品に一貫する最大の特徴は「読めない」こと。お話しを伺うと、読む機能を止める=自分が最後の読者、という点が全作品に共通しているとのことで、わざとギリギリ読めないくらいの幅でカットしたり、曲線をつけたりとミリ単位で計画性を持って取り組まれているという...信じられないお話しでした。
今回の最新作は本文頁に刃を入れない新たなアプローチのシリーズとなりました。ここに飯田さんのメッセージを引用します。
手にとって、ひらく。
この一連の動作によって、読書は始まる。
本はこの動作がプログラムされた装置である。
表紙、扉、目次、ノンブル、本文、奥付などに
一連の情報が緻密に流し込まれた「本」の全機能を止め
これを結晶化しようと考えた。
時間をかけて人の手を渡り、
最後に自分にたどり着いた古本を
台座に封印し、次の役割を熟す。