日比野孝三の絵葉書
Bibliographic Details
- Title
- 絵葉書
- Year
- 1907~1912(明治40年〜大正1年)
- Size
- h143 × w93 × d50 mm
- Weight
- 510g
- Pages
- 125
- Language
- Japanese / 日本語、English / 英語
- Binding
- 葉書
- Printing
- 一部リトグラフ含む
- Materials
- Paper
時は、1900年代。
アメリカ西海岸のポートランドに
«古屋商店» というヨロズヤがあった。
明治40(1907)年~大正1(1912)年頃の和洋折中絵葉書コレクション、その数125点を一挙にご紹介します。図柄も実にさまざまで、観光地の記念ハガキや洒落た年賀状、趣向を凝らした私製絵葉書まで、その種類の多さから、郵便が最たる通信手段だった当時の様子をうかがい知ることができます。
使用済の宛名面から、所有者は当時のアメリカのヨロズヤ「古屋商店」支店長日比野孝三と特定できました。絵葉書は日比野宛51枚、その他日本人宛11枚、白木屋関係4枚と、私製絵葉書20枚、アラスカ・ユーコン太平洋博覧会(シアトル)公式ポストカード未使用8枚など。使用済みのものはアメリカ国内郵便が多く、各地にいた同朋との交流をうかがわせる。業務に関連する連絡関係が少ないことが惜しまれますが、状態は良く、絵柄や写真はもちろん、切手や消印などのディテールも、グラフィック的な要素としてたのしむことが出来そうです。
「ヨロズヤとは、北米に移住した日本人移民が食品を中心として日本から様々な雑貨を輸入し販売した食品雑貨店のことを指す。ただし、事業は食に限らず広範にわたり、現在の総合商社のような業務を行っていたところが多く、まさにヨロズである。(中略)海外へ移住した日本人移民は、すでに19世紀末から食品や雑貨を輸入しており、(中略)その頃ポートランドには、古屋商店や伴商店、松島商店などがあった。」
2016年キッコーマン食文化講座「ヨロズヤの世界と日系人の食」2016年3月26日 小嶋茂
たった一枚の絵葉書から、送り主と受取人の関係、その時代や地点、生きた人間の確かな存在を知ることが出来ます。
私が初めて市場で落札した紙モノは絵葉書でした。当時はまだ古い絵葉書にはあまり人気がなく、市場でも会場隅の陳列台のその下に押し込まれているなど冷遇ぶりは一目瞭然でした。そんな絵葉書を初めて仕入れたのは大岡山で店をやっている当時のことで、店頭の100円均一の本でさえさっぱり売れない状況打開にならないかと仕入れてみたのがきっかけです。落札したみかん箱1つ分の絵葉書はほとんどが海外の観光地の写真絵葉書で、モンサンミッシェルだけで10枚ほどあり、それを店内に目立ところに貼り出してみると1枚300円で面白いように売れます。絵葉書は売れると味をしめました。
主に日本人が海外で買って帰ったものを仕入れていたのですが、戦前のしゃれた絵柄のものに手を出し始めると、日本人が海外から留守宅に送った絵葉書がまじることが増えました。
例えば単身で長らく海外赴任しいるお父さんが日本に残してきた幼い子どもたちに宛てた絵葉書(たいてい全文カタカナで書かれています)などにはとくに心情がこもっていて、絵葉書を読むことの面白さに気付きました。一枚の紙の上、寂しさをおし隠して面白おかしく子どもをあやすような文面の向こうに、人間が立ち上がってきます。
エフェメラを扱う面白さ・奥深さを初めて教えてくれたのもまた絵葉書だったように思います。
Text by 佐藤真砂