美哉漢字

Bibliographic Details

Title
美哉漢字(漢聲雑誌87+88)
Artist
Huang Yongsong / 黄永松
Editor
Wu Meiyun / 呉美雲
Designer
Xi Song / 奚淞, Yao Mengjia / 姚孟嘉
Director
Huang Yongsong / 黄永松
Publisher
ECHO PUBLISHING CO., LTD. / 漢聲
Year
2012
Size
book: h298 x w245 x d25 mm / case: h300 x w250 x d32 mm
Weight
book 1,250g / with case 1,400g
Pages
144pages(No.87)、88pages(No.88)
Language
Chinese / 中国語繁体字
Binding
Japanese Binding / 和綴じ
Materials
Paper
Condition
new

美しい字は、字にあらず、
文化をうつす人である。
中国の漢字民藝。

中国を中心に日本や韓国を含めた漢字文化圏に残る「美術字」をテーマにまとめた本。デザインに興味のある方、書が趣味という方、民芸好き、何より若い世代や子どもたちに是非手にとって欲しい一冊です。

漢字は、日本人にとっても身近なもの。美術字というとピンときませんが、たとえば、ヘノヘノモヘジに代表される文字絵(もじえ)は、文字を組み合わせて絵を作る江戸時代の遊びでした。染織工芸家であり、民藝運動の中心的人物の1人でもあった、芹沢銈介(1895-1984)も文字絵を独自に展開し、グラフィカルな作品へと昇華させています。

漢聲の刊行物にしては地味に感じる黒を基調とした外箱の蓋を開けると、吉祥紋である雲紋の型抜きが現れます。箱から本体を取り出すと、黄色地に龍の頭を持つ「龍」の字と、裏表紙には龍と対になる「鳳」の字がそれぞれ画面いっぱいに描かれています。ページを捲っていくと、一枚の絵に見えて、実は漢字が隠れているだまし絵のような作品や、カリグラフィーのように漢字でモチーフの輪郭を描いているもの、漢字そのものが縁起の良い草花として描かれる花文字まで、あらゆる漢字のアートが所狭しと配置されています。合計230ページの本体はずっしりと重く、気軽には持ち歩けないほどです。

漢聲のHuang Yongsong(黄永松)編集長曰く、美術字は「百姓の字」であり、学校に通えず字の読めない子どもから知識人まで、中国人ならば誰もが理解できるシンボルなのだだとか。本書では、美術字研究の第一人者である張一道教授を中心に「字と図から派生した美術字」という筋道を辿りながら、膨大な文献と図版を根拠に美術字の美しさを伝えています。

民族や地域によっても美術字に異なる趣向が反映されており、『美哉漢字』に於ける独自の分類については、中国の漢字文化史にとっても貴重な資料として評価されています。効率化、デジタル化の波に呑み込まれ、統制のとれた無機質な漢字ばかりが飛び交う現代中国で、美術字の持つ人格的な美しさは過去のもの。中国国内でも失われつつある美術字は、本書の刊行をきっかけに、各地が行政主体で後継者を育てる試みが始まっているようです。

日本も、文字絵を過去の産物として邪険に扱わず、デザインに興味のある学生や、書道に精通する先生方、文字の概念を学んでいる最中の子どもたちなど、さまざまな観点から現在の文字絵を描いてみると、面白いのではないかと勝手に想像してみたりしています。


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