peu belle (ed.16) / 都筑晶絵
Bibliographic Details
- Title
- peu belle (ed.16)
- Artist
- Akie Tsuzuki / 都筑晶絵
- Designer
- Akie Tsuzuki / 都筑晶絵
- Year
- 2021.9.26
- Size
- h126 × w86 × d11mm
- Weight
- 70g
- Edition
- no.16 of a limited edition of 30
peu belle
edition no. 16
この本は、ふたが開くのをじっと待っている紙の宝石箱。作品名の「peu belle(プベル)」は、フランス語で「ちょっと うつくしい」という意味なのだとか。都筑さんが世界各地で拾い集めた紙であつらえた無垢の一冊に、製本プロセスでこぼれ落ちたいろいろな「紙の欠片」が大事そうに挟み込まれてある。ページをめくれば、名のない星屑のようなちいさな紙片たちがほろほろ瞬きます。限定30冊の内の1冊。
- 作家メッセージ -
製本家の仕事は、依頼を受けてはじまります。特装の本や箱、詩集や句集、手帳やアルバムなど、一冊から数百部まで特別な本をつくります。
わたしの製本教室に来てくれたのがきっかけで、初めて特装の仕事を依頼してくれたのは、グラフィックデザイナーの山口信博さんでした。その依頼内容は、著者との手紙、通らなかったデザイン案、校正刷りなど、山口さんが本をデザインする過程で生まれ出たものをまとめて製本し、一冊ずつ箱に収めることでした。その時につくった10冊の特装本と箱は、2010年に三重のギャラリーやまほんで開催された「IN prints ON Paper 〜 山口信博・紙の上の仕事」展で、展示されることになりました。
依頼を受けて作る本や箱は、どれも限られた部数を制作するので手元にはほとんど残りません。山口さんが校正刷りなどを捨てられないように、制作の証しとして小さな欠片でも残しておきたいと思うのか、ただ愛おしいからか、なぜだか分からないけれど、いろいろな欠片を捨てずに残しています。
伸びたコイルのように丸まった細長い紙、和紙の切れ端、表紙を包むときに切り落とした角の三角、糸で綴じるために折丁にポンチで抜いた丸い穴や半月の紙の重なり。これはと思う欠片は避けておいて、作業が終わったらガラス瓶や小さな箱に入れて、そっと引き出しにしまい込んできました。2021年に大阪のippo plusで個展「by paper」をさせていただくことになり、ギャラリーで展示する「作品」も新しく作ることになりました。何をつくればよいのか分からず頭を抱えていたら、それを見かねて、オーナーの守屋さんが何度もわたしのアトリエを訪ねてくれました。来るたびに壁にかかっているものを手にしたり、引き出しを開けたり、欠片をじっくり見ながら、「これ、もう作品やねんな」と愛おしそうに手にしていたのです。それを見て、なんとか応えたいと思って生まれたのが、この小さな本です。
これまで集めてきたいくつかの種類の紙を製本し、まっさらなページにはいろいろな「紙の欠片」を挟み込みました。タイトルの「peu belle(プベル)」はフランス語で「ちょっと うつくしい」という意味です。めくるたびにあらわれる星屑のような紙の欠片。この本はわたしの小さな宝石箱です。
<写真>
[上2点]'IN Prints ON Paper' at gallery yamahon 2010.9.11-10.3 / 撮影 島隆志
[下2点]'by paper’ at ippo plus 2021.9.16-10.3 / 撮影 高橋真之
-
プロフィール
都筑晶絵(つづき・あきえ)
1979年生まれ。2001年にフランスで手製本と出会う。多摩美術大学卒業後、ドイツ人のブックアーティストであるヴェロニカ・シェパス (Veronika Schäpers) の制作の手伝いをしながら、より簡素でモダンな製本を知り、内容から考える本づくりを始める。2007年1月からスイスの製本専門学校Centro del bel Libro, Asconaで再び製本を学び、2008年3月から東京で製本教室を始め、展覧会のための作品集や特装本のオーダーを受ける傍ら、ヒロイヨミ社山元伸子さんと ananas press として作品をづくりを始める。2011年より名古屋にアトリエを構え、各地でワークショップを行う。