Anmerkungen zur Vergangenheit / Armando

Bibliographic Details

Title
Anmerkungen Zur Vergangenheit
Artist
ARMANDO / アルマンド
Director
横田茂 / Shigeru Yokota
Images
アルマンドによるフォト・ドローイング 21点 / Contains 21 Photo Drawings by ARMANDO
Publisher
Tokyo Publishing House
Year
2010
Size
h424 x w305 x d15 mm
Weight
1400 g
Pages
68 pages
Language
日本語 Japanese / オランダ語 Dutch
Binding
ハードカバー / Hardcover
Printing
ゼログラフィー / Xerography
Materials
PHO A Kent
Edition
限定30部 / Limited 30 copies
Condition
As New

本書の造本を手がけたのは製本家の大平立子 / Binding by Ritsuko Ohira

隠されて、ズラされて、
濃かったり、薄かったり、不均一な
記憶というもうひとつの過去へ。

アルマンド(Herman Dirk van Dodeweerd)は画家、彫刻家、詩人、製図家、グラフィック・アーティスト、コンセプチュアル・アーティスト、作家、王立ジプシー楽団タタ・ミランドのバイオリニスト、自身の弦楽四重奏団の創設者で第一バイオリニスト、ボクサー、テレビ番組「ヘレンリード(男装)」の制作者など、たくさんの顔を持つ異能のアーティストです。オランダの文学賞のほとんどを受賞し、2011年にはVSB詩賞を受賞。爵位も多数授与されるなど、オランダ文化における彼の重要性は計り知れません。89歳で亡くなる直前まで、ポツダムのアトリエで精力的に制作を続けました。

幼年期のアルマンドは、アメルスフォールト(オランダ)にかつてあったユダヤ人強制収容所の目と鼻の先で育ちます。そこで目撃した残酷な戦争体験は、拭い去れない記憶として沈殿し、彼の作品に、深い影響を与えました。作品のモチーフとなることが多い記憶の原風景がここにあります。

青年期のアルマンドは、非物語的、非感情的な芸術運動「グループ・ゼロ」に参加します。その活動が1960年代半ばに終焉を迎えると、ジャーナリズムと詩作に専念し、1972年から再び絵を描き始めます。1979年にはベルリンに移住し、そこで彼は、旗、車輪、三叉路、梯子などの単純な形を、厚塗りの重厚な絵画として描きはじめました。それが後に世界的に知られることになる一連のモノクロームの大きなキャンバス作品です。1988年以降には、自ら描いたフォルムをさらに立体化させた大型のブロンズ彫刻を発表しています。

本書は、50歳を迎えた円熟期のアルマンドが1980年代に制作した「過去へのメモ(Anmerkungen zur Vergangenheit)」シリーズから21点を選び、ゼログラフィーで再現した作品集です。アルマンド自身が蚤の市で見つけた、名前も知らない人々の紙焼きの古いポートレイト写真が作品の素材になっています。厚紙に貼り込んだそれらのポートレイト写真の下には、語りかけて、記憶に触れようとしているかのように、鋭く控えめな線描が描き添えられています。

すでに美術館に収蔵されている作品を含め、合計21点が網羅的に収録された本書は、かなり大きな本ですが、それでもオリジナル作品の原寸よりは縮小し、厚紙の代わりにケント紙に印刷しています。製本家の大平立子が仕立て、Tokyo Publishing Houseから30部限定で刊行されました。全30部のうち6部までが特装版で、背表紙が丸背の製本になっています。

過去があり、現在があり、そして未来というものもある。
数えれば三つ。が、もうひとつ、四つ目のものがある。
思い出の、あるいは、思い込みの、というべきか、
そういう過去である。まったく別の過去。

——— アルマンド(本書より抜粋)



Text by 櫛田 理