Buch-Elemente von A bis Z
Bibliographic Details
- Title
- Buch-Elemente von A bis Z
- Artist
- Yasutomo Ota / 太田泰友
- Year
- 2014
- Size
- h145 × w165 × d45mm
- Weight
- 330g
- Language
- ドイツ語/German
- Printing
- 活版印刷(木活字、鉛活字)
- Materials
- 紙、ボール紙
- Edition
- 10
- Condition
- new
本に関するA to Z。
« Buch-Elemente von A bis Z »
2014
落ち着いた赤色の紙が四方を囲み、現在本として認識される要素の中で不可欠と思われる「直線と垂直」の美しさが際立つ1冊。作者の作品群の中でも特に正統派と呼ぶにふさわしい仕上がり。ドイツに脈々と伝わる正統な製本・印刷技術を余すところなく味わうことができます。
タイトルを日本語に訳すと「本に関する A to Z」、内容はタイトルの示す通り、本づくりや本に関連する言葉を集め、AからZまで頭文字で分類したもの。
例えば、Dには「刻印」を表す「Druckvemerk」、Eには「蔵書票」を意味する「Exlibris」などが印刷されています。Yのページは一風変わってドイツ時代の太田泰友のニックネーム「Yashi」が印刷されています。本づくりに本人は不可欠ですから。
編み目が美しい背の景色は、精巧な糸綴じの技術によるもの。コプティック製本の発展型で、昔からある綴じ方ですが、名称は定かではありません。開きも良く、耐久性に優れているため、太田泰友作品ではたびたび登場します。本人曰く、折丁を綴じるのではなく、一枚の紙に穴を開けて綴じ込むその行為自体が直感的で好きなのだとか。
本作は作者がドイツのミュンヘンにある活版印刷工房フリーゲンコプフで制作した数少ない作品の内のひとつでもあります。活字は木活字と鉛活字の二種類を使用しており、木活字で印刷したのは、大きなアルファベットの大文字、そのまわりに配置された複数の概念やキーワードを鉛活字で組んで印刷しています。それぞれのページが、構成されるタイポグラフィー表現としても成立しています。
作品を構成する1枚1枚のページには、重さのある芯材を用い、物体としてずっしりと重みのある作品に仕上がっています。手に持ってみると、まるで石のような重さを感じること、そしてシンプルに文字のみで構成された内容は書物の歴史を遡るという観点に立った場合、この一冊は本の歴史が刻まれた紙の石碑とも言えそうです。