Bücher|Veronika Schäpers ヴェロニカ・シェパス
Bibliographic Details
- Title
- Bücher | Veronika Schäpers
- Artist
- Veronika Schäpers / ヴェロニカ・シェパス
- Year
- 2022
- Size
- h320 ×w250 × d73mm
- Weight
- A:2010g, B:1280g
- Language
- German / English
- Materials
- #1、#2、#4、#5はすべてArctic Paperの様々なムンケン(Munken LynxとMunken Kristall、斤量は異なる)に印刷されています。 #3はIBO Reflexという、Irma Boom OfficeがInapaのために開発した薄くて丈夫な紙に印刷されています。
アーカイブボックスの出版について 2014年、オッフェンバッハのクリングスポール美術館で開催された展覧「Entgrenzt」の一環として、それまでに制作された全書籍のカタログが発行され、合計29版が収録されました。2014年以降も9冊が追加され、手製本のカタログ、テキスト冊子、2冊の別冊に記載されています。すべてを1つの箱にまとめて収納し、今後追加されるカタログや冊子、エフェメラを収納するスペースも確保しています。箱はKlug Conservations社のライトグレーのアーカイバル段ボール製で、タイトルはダークブルーまたはホワイトでシルクスクリーン印刷されています。厚さ6mmの取り外し可能な2つのインサートは、将来的に出版物を追加する可能性を提供します。 ボックスには2つのバージョンがあり、Aは#2-5を、Bは#1-5を収録しています。 Publication of the Archive Box Bücher // Books In 2014, as part of the exhibition «Entgrenzt» at the Klingspor Museum Offenbach, a catalog of all the books created up to that time was published, containing a total of 29 editions. Another nine books have been added since 2014, as described in a hand-bound catalog, a text booklet, and two separate publications. Everything is stored together in one box, which also has space for future additional catalogs, booklets and ephemera. The box is made of light gray archival corrugated cardboard from Klug Conservations with a title silkscreened in either dark blue or white. Two removable inserts, each 6 mm thick, offer the possibility of adding further publications in the future.
現代を代表するブックアーティストが
自作自装したカタログレゾネ。
300部の限定出版。
ヴェロニカ・シェパスが自身のブックアート作品の全記録をまとめたボックス型のカタログレゾネ。2021年に構想を立ち上げ、パンデミックによる各所への影響もあり、完成したのは2022年の秋になっていた。このボックスも自作自装の作品で、世界にたった30部しか存在しない限定版ではあるけれど、ほとんどのオリジナル作品が美術館やギャラリーに収蔵されている彼女の造本世界を垣間見ることができるまたとない機会といえる。
ブックアートの世界で総合力がもっとも高い(とわたしたちは思っている)ヴェロニカ・シェパスは、たしかな技術に裏打ちされた造本力、そして、あらゆるテキストを手がかりに、物体としての本に叙情性を内包させるセンスを兼ね備えている。なかなかいない、稀有なブックアーティストである。
本書には、ヴェロニカが日本に滞在していた数年のあいだに制作した最初期の作品から、ドイツ在住の多和田葉子さんに声をかけて数年がかりで実現した「OKONOMIYAKI(お好み焼きをテーマにした本)」など、これまでのさまざまなブックアートプロジェクトを一望できるボックスセットに仕上がっている。
このアーカイバル・ボックスは、もともと書籍や古文書、版画など貴重な資料や美術品を長期保存するために開発された無酸性の保存箱で、ふだんヴェロニカ自身が作品を保管するのにアーカイバルボックスを使用していたことから、無酸性のボックスカタログを制作することになったという。軽くて丈夫、実用的で美しい。この収納手段は、やはりいかにもヴェロニカらしい。なお、この箱は、過去のカタログや出版物もすべて収まるように、設計されているらしい。箱のメーカーはドイツのKlug Conservationで、図書館や博物館向けの大きなサプライヤーである。
箱をひらくと、めくるめくヴェロニカワールドがはじまる。大学卒業後にすぐに制作した作品のドキュメントも収められている。ページをめくる度にあらわれる、まったく異なるアプローチで作られた作品群。それぞれの作品としての完成度の高さには目を見張るものがある。本をつくる職人としての技術の高さとアーティストとしての世界観の両方が、本の細部に溢れ出ている。コンテンツの充実感もさることながら、ページをめくる手の皮膚からも喜びが伝わってくる。
過去のオリジナル作品は、もともと限定数十部しかつくられておらず、それもほぼすべて然るべき収蔵先に入っているため、あたらしく購入することはほとんど不可能。そのため、このアーカイブボックスは彼女の作品世界を一望できるまたとないチャンスなのだ。すべてのボックスには、シリアル番号とヴェロニカの直筆サインが入っている。
Text by 乙部恵磨