Frucht Ⅱ

Bibliographic Details

Title
Frucht Ⅱ
Artist
Yasutomo Ota / 太田泰友
Year
2017
Size
h110 × w110 × d118mm
Weight
0.99kg
Language
German
Printing
ハンドオフセット印刷
Materials
麻糸、紙、厚紙
Edition
23
Condition
NEW

まるごとキウイ1個分。
« Frucht Ⅱ »
2017

鈍い薄緑色のキューブには、キウイが丸ごと入っています。三方の小口に現れるキウイの輪郭は、作家自身が購入し2mmずつにスライスしたその個体そのものの輪郭が映し出されたもの。近づいてみると、その輪郭を浮き上がらせているのは、わずか2mmの幅に書き出されたドイツ語の文字。そこには、個体の情報、キウイの概要、そしてキウイを使用したレシピが一面ごとに記されています。ページを開くと紙の厚み2mmと同じ厚みにスライスされたキウイの断面が現れ、ページをめくるごとに直径をわずかに変えながら展開していきます。

薄緑色の表層は、キウイの果実の色をイメージして選定した既成の洋紙。テクスチャを含め、探し回った挙げ句に見つけた紙の名前には「キウイ」が含まれていました。綴じに使用した糸は、皮が茶色く毛状の繊維に覆われていることから、薄茶色の蝋引き紐を使用しています。

« Frucht Ⅱ »は、本以外のものを本の中に移し替えるという行為的直感性と、薄い層状のものの積み重なりが、本というオブジェクトを想像させるという視覚的効果の二面性を結実させた作品です。

Fruchtシリーズについて、作家はこのように説明しています:

ひとつのオブジェクトを薄い層状に切ると、たくさんのスライスができあがる。そのスライスをまた積み重ねると元のオブジェクトの形が立ち現れる。スライスとオブジェクトの関係が、私には折丁と本の関係に見える。また、一つのオブジェクトの詳細を観察する方法であるCTは、物体の断面を見ることによってその目的を達成している。私は、オブジェクトの詳細を観察するために、折丁一枚と同じ厚さにスライスしてみた

2mmというのは、私が本づくりにおいて頻繁に使う単位だ。ぺらぺらとした紙を使う時、もっと言うと、紙に印刷をするとき、平面で捉えることが多いが、実際には紙は「厚さ」を持っている。このプロジェクトでは、通常複数枚の紙が重ねられ折られてできている折丁を、ボール紙から作った一枚で構成することによって"厚み"が強く意識させられる。私は2mmという厚みの中に宇宙の広がりを感じる。フルーツのスライスの2mmの中にもたくさんの興味深いことが起きているし、本を作る過程においても、2mmの中に本当にたくさんのドラマがある。2mmともっと付き合いたくて、2mmの可能性をもっと知りたくて、このプロジェクトでは一枚の折丁の厚みの中に文字としての情報を入れた」と作家は語っています。


本作はドイツ時代に制作した最後の作品で、2017年に日本に拠点を移し、新たな創作へ向かうことになりましたが、本作を通じて「対象物に近づく」、「身近なものを本にする」、「本を身近なものに寄生させる」という意識がより高まり、これらの思考は現在に至るまで創作の重要なテーマとなっています。


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