アンゼルムの門 2
Bibliographic Details
- Title
- アンゼルムの門 2
- Artist
- コイズミアヤ / Aya Coizumi
- Year
- 2022
- Size
- h235 × w140 × d80mm
- Weight
- 830g
- Materials
- シナ合板、文庫本(ヘッセ『メルヒェン』新潮文庫/高橋健二訳)
- Edition
- Unique
- Condition
- New / 新品
門の扉と本の扉
内面に入って行くその扉は
常に開かれるときを待っている
「箱」という、“開く・閉じる”、“内・外”の関係性を持った「本」と呼応するような造形物を展開する作品の中でも、直接的に本そのものを作品の一部として扱った毛色の異なった作品。モチーフとなっているのは、ヘルマン・ヘッセ『メルヒャン』に所収された『アヤメ』の中に登場する<アンゼルムの門>。高橋健二訳の新潮文庫がそのまま木工の造形物に、寸分の狂いもなくぴったりと収まります。
合板を張り合わせた木材の塊を削り、ヤスリがかけられた岩肌のような荒々しい表層の造形は、作中のラストに主人公のアンゼルムがたどり着く、老人のが待つ、細く内部へと続く割れ目を持った岩壁を想起させます。それとコントラストをなす、本の小口のような綺麗に切られた断面の門。そっと木の地肌に同化するように収められた本は、ヘッセが描く世界の、自分の内面に入っていく、全てと同化する門を見事に昇華しています。
作家が最も印象的であったという作中の一文を紹介します。
この世のあらゆる現象は一つの比喩であり、そしてあらゆる比喩は、その準備ができていれば、魂がそれを通って、そこでは汝と我と昼と夜がみな一つであるような、世界の内面に入って行くことができる、開かれた門なのである。
ーーー『アヤメ (Iris)』(1917年)ヘルマン・ヘッセ
構成するすべてがはだ色の造形作品。本を開くと、ノドの部分にはアヤメ色が広がっています。
Text by 中澤健也
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