本は手の中にあるけれど
物語の在処は
本とは別の地平にある 

無印文庫『小泉八雲』（小泉八雲 著 / 櫛田理 編/  良品計画 MUJIBOOKS 発行）の「小泉八雲の言葉」に収録されている表裏２ページから、言葉の箇所だけ切り刻み、一文字も落とさず、貼り合わせた作品。

素材に使用したのは、2020年に良品計画が刊行した『小泉八雲』に収められていた「幽霊」と「盆踊り」。それぞれ「幽霊」と「盆踊り」という短編からの短い引用文が印刷されている表裏２ページを素材とした。

物語が解体され、文字となったひとつひとつのピースをできる限り意味を生み出さないように貼り合わせていく過程で、この作品は、表裏の作品の文字が混ざりながら織り込まれている。作品「隣の部屋 書庫」で解説した壁の存在のように、もともと表裏にあって、内容的には無関係だった「幽霊」と「盆踊り」が、この作品で一体となり、文字空間として、一枚の紙のオモテとウラに結晶化している。

もしも本の幽霊がいるなら、こんな姿ではないかと思わせる作品です。

Text by 乙部恵磨

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