ガラス乾板 / glass film plate

Bibliographic Details

Title
glass film plate / ガラス乾板
Year
1930's
Size
w82× h82 / w100 × h85
Weight
40g each
Materials
glass dry plates / ガラス乾板
Edition
Unique / 一点物
Condition
Some are Cracked / いくつかにひび割れあり

シカゴ美術館のライヤーソン図書館が旧蔵したガラス乾板など11枚セット。ライヤーソン図書館(現・ライヤーソン & バーナム図書館)は美術と建築に関する膨大な研究コレクションがある / A set of 11 glass dry plates and others from the former collection of the Art Institute of Chicago. The Ryerson Library is the art and architecture research collection of the Art Institute of Chicago.

ガラスに写る
ひび割れた日々と
忘れられた写真術。

フィルムや紙焼きなどの実体をともなう写真は、20世紀に固有のメディアであり、これから減っていくしかないので、いつも気にしているアイテムのひとつです。なかでも、フィルムが普及するまで明治時代から昭和時代まで使われていた「ガラス乾板」は、感光する写真乳材を無色透明のガラス板に塗布したもので、質感、重量などはフィルムとは比べ物にならない存在感があります。その後の写真メディアに比べると、重厚なのにずっと壊れやすいという点も心惹かれるところです。

実際に、ちょっとした衝撃で簡単にヒビが入るガラス乾板ですが、被写体の上にデザインを重ねたかのように罅がかたちづくる造形には、ひどく陳腐な例えですが、ゴシック小説に似た物語性を感じさせられます。

ひびわれた風景、ひびわれた世界、ひびわれた日常 …… 例えに使われるこうした言葉をもっともよく物象化しているのが、ヒビや欠けのあるガラス乾板だと思います。


Text by 佐藤真砂

 

<参考情報>

・ガラス乾板とは:ガラスに感光材を塗布した撮影用の記録媒体のこと。材質がガラスであるため扱いづらく(水が触れたら跡形もなく像が消えてしまうほど)劣化もする一方で、ガラス乾板に写された写真には、そこにしか記録されていない当時の様子が残っているため、貴重な文化財といえる。

・ガラス乾板の歴史と仕組み:ヨーロッパでなんとか絵ではなく像に残せないかという研究の結果、銅板を使う写真技術が生まれ、その後ガラスを感材(かんざい)として使いました。感材とは、光に当てて像を現すために使う材料のこと。発明された当初は、薬剤で湿らせたガラス乾板を使う湿板写真、液が乾かないうちに撮影と現像を終えなければ失敗。日本では、湿板写真を改良した乾いた状態で撮れるガラス乾板が明治20年ごろに導入され、昭和30年代まで使われていたそうです。

・ガラス乾板の特徴:保存性や耐久性は最上級。で、薄いフィルムやデジタルでは到底敵いません。どのくらいすごいのかといえば、解像度を画素数に換算できないぐらいの高精度の描写が可能。ピントがぴったり合ったガラス乾板の写真は、現代のどんな高性能の大判カメラも敵いません。

※ガラス乾板には、個人が撮影した世界で1点きりのものも多く存在していますが、当該商品については、「当時の映写用のスライドポジ(ガラス乾板をガラス乾板に密着焼きしたもの)」であり、複数の存在が予想される「映写用スライドとみられ」ることから、呼称としては「映写用スライド」とした方がよいのではないかとのご指摘をいただいことを付して記しておきます。

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