重なる箱 3

Bibliographic Details

Title
重なる箱 3
Artist
コイズミアヤ / Aya Coizumi
Year
2017
Size
h138 × w307 × d326mm
Weight
2.5kg

重なる箱の傑作。
柔らかく、メカニカル、
読書の立体造形。

コイズミアヤの造形作品を代表する「重なる箱」シリーズ。初期には、階段や柱などミニチュアの建造物を内包する〈箱〉を制作していた作者が、〈箱〉であることが生み出すエネルギーを、純粋な“かたち”へと変換していく試行錯誤の過程で発見した「入れ子の箱」という発想。入れ子といっても、葛籠(つづら)やマトリョーシカ人形のように、順番にかさねて入れる求心的なネスティング構造ではなく、遠心的にズラしていく独自の方法。この「入れ子の箱」という発想から生まれた「重なる箱」の作品群をご紹介します。

現時点でNo.11まで継続している「重なる箱」シリーズのNo.3にあたる本作は、シリーズ史上もっとも複雑で、広げると砂上の街か、地下回廊か、迷宮のような景色になります。

考え方はシンプルです。入れ子による垂直方向の重なりに、横スライドによる水平方向の動きを掛け合わせて、発展させているもの。ただ、その完成形は、閉じれば難攻不落の大迷宮、開けば砂上の楼閣。これぞ、コイズミ劇場。

コイズミさんによると、前作までは、一つの箱から次の箱へ、いわば“淡々と進むという作り方だったのに対し、この作品は、箱が次の箱を“待ち構える”という制作体験だったのだとか。次の箱も、次の次の箱のことも想定して、垂直にも水平にも重ねていける状態を常にフィードバックしながら、もちろんCADなんて使わず、目と手と頭だけで設計するなんて、脳が汗をかくような制作過程だったのは、間違いありません。

実際に作品に触れてみると、これがよくできているんです。閉じた状態から、一つひとつ箱を解いていくと、例えばホフスタッターの『ゲーデル、エッシャー、バッハ』を読み込むときのように、浩瀚な書物のページから未知の世界の扉がどんどん開かれていく、醒めない興奮があります。閉じた状態でA3サイズほどの造形物ですが、知的でスペクタクルな超大作なのです。最後に出会うどこかマラケシュ(モロッコ)のバザールのような姿にも、グッときます。


Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS)