重なる箱 5

Bibliographic Details

Title
重なる箱 5
Artist
コイズミアヤ / Aya Coizumi
Year
2017
Size
h123 × w200 × d200mm
Weight
1.23kg
Materials
Edition
Unique
Condition
New / 新品

入れ子と遠心。
相容れない2つの力を
らせん状に組み上げる。

コイズミアヤの造形作品を代表する「重なる箱」シリーズ。初期には、階段や柱などミニチュアの建造物を内包する〈箱〉を制作していた作者が、〈箱〉であることが生み出すエネルギーを、純粋な“かたち”へと変換していく試行錯誤の過程で発見した「入れ子の箱」という発想。入れ子といっても、葛籠(つづら)やマトリョーシカ人形のように、順番にかさねて入れる求心的なネスティング構造ではなく、遠心的にズラしていく独自の方法。この「入れ子の箱」の発想から生まれた「重なる箱」の作品群をご紹介します。

現時点でNo.11まで継続している「重なる箱」シリーズNo.5にあたる本作は、不揃いの“板厚”からなる大小さまざまの箱を同心円状に組み上げる構造で、スケルトン腕時計のように、メカニカルな構造がむき出しになっています。


複雑にみえる構造は、入れ子(求心)と遠心によるもの。本来は相容れない2つの矛盾する力を掛け合わせることで、高さも厚みもバラバラの内箱が、ズレながら幾重にも乗り掛かります。また、それぞれの箱は中央で重心をとれるように設計されているので、固定していないのに、不思議な安定感があります。野面積みでも、カオスでもなく、巧みに設計されているのは、コイズミアヤ作品に一貫しているけれど、とりわけ重なる箱 5」は、幾何学的かつ有機的で、箱の「機(からくり)」を感じる作品です。


Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS