こま

Bibliographic Details

Author
Aya Coizumi / コイズミアヤ
Year
2019
Size
h203 × w152 × d24mm
Weight
1.02kg
Materials
文庫本(『カフカ短篇集』岩波文庫/池内紀訳)のページ、糊、アクリル
Edition
Unique
Condition
New / 新品

2ページで完結する
カフカの短編「こま」の
文字を総入れ替え。

文庫本『カフカ短篇集』(岩波文庫/池内紀訳)に収録されている短編「こま」の2ページ(紙1枚分)を切り刻んで、一文字も落とさず、ランダムに糊で貼り合わせた作品。

「紙の表と裏に文章がある」という本の特徴を見事に捉えている怪作。厚みのあるアクリル板で挟んで、両面から見える仕立てです。

どの2ページ(紙一枚分)でもよかったのではなく、「その2ページで物語が完結する短編作品」であることが重要で、短編が多く残されているカフカの作品から選ばれた、のだとか。

もともと、筋や運びがあり、意味のある言葉が印刷されている物語。そこから一文字ずつ切り離し、糊で貼り合わせていく過程では、たとえ偶然であっても、意味のある言葉を作りださないように、注意深く組み合わせたのだとか。ご本人が度々口にしている、できる限り恣意性を残したくない、という考えは、ここでも徹底されています。

作者のコイズミアヤにとって、あらためて日本語、特に「ひらがな」の持つ“音”の奥行きを強く感じた経験になったようで、おなじ表音文字でも、英語ではあまりに記号的で、漢字だけになると意図せず模様のようになってしまう。その点、ひらがなは、まるで耳元でささやいてくるようだった、というのですから面白いものです。

造形の視点では、貼り合わせるための糊代の分だけ、ページの面積が縮まり、不規則な美しさが出現しています。文字量そのものは変わっていないのに、怪文書のごとく、まったく別のあたらしい景色です。

作品が印刷された特製の収納箱も、美しい佇まいです。


Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS)

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