クチケル[特装版]|泊昭雄

Bibliographic Details

Title
クチケル[特装版]
Author
L.A.Tomari. / 泊昭雄
Editor
Ema Otobe / 乙部恵磨
Designer
Eriko Ota / 太田江理子
Director
Book Director + Editor +Publisher /企画+編集+発行/櫛田 理
Images
L.A.Tomari. / 泊昭雄
Publisher
FRAGILE BOOKS
Year
2024.2.1
Size
Φ96 × h390mm (Cylinder) / w257 × h364 × 15mm (book)
Weight
860g
Pages
128p (35 images)
Language
Japanese & English / 日本語、英語
Binding
Singer sewn binding, in Paper Cylinder / ミシン綴じ、紙管入り
Edition
Limited Edition of 300 copies / 限定300部(エディション番号付き)
Condition
As New / 新品
ISBN
9784909479020

翻訳: Miles Yebisu /まいるす・ゑびす、印刷製本: 図書印刷株式会社、協力: BON BOOK/無印良品 MUJI BOOKS、特別協力: 辻 和美/内田鋼一/高橋酒造株式会社

ヒトもモノも、
クチケル姿がうつくしい。

鹿児島出身の写真家、泊昭雄がガラスの被写体だけを撮りおろしたアーティストブック。現在進行形で朽ちていくことを「クチケル」と名付け、独自の世界観で一冊まるごと構成されています。本書のためにあつめられたガラスのオブジェは、金魚鉢やラムネ瓶、無印良品の黎明期に登場した「ガラス器」や仁丹を入れていた古い小さなボトルなどなど。あやうく捨てられていたかもしれないような透明の被写体ばかりが登場します。なかには、辻和美さんや内田鋼一さんの手控えの品から、京都の「大吉」や西荻窪の「poubelle」や栃木の「茂呂」といった骨董・古道具界の名店主から譲ってもらったものも。

写真集として前代未聞ですが、ガラスのボトルが入っていそうなペーパーシリンダーの中に収められています。なかには無地の大型本が入っていて、そこに35点の写真が挟み込まれています。本体には直接印刷していません。綴じられた紙の束がこわれものを包む緩衝材のような役目になって、撮られたガラスの写真を守っているという造本意匠。クチケルという世界に寄せて、宮沢賢治、岩本素白、寺田寅彦、柳宗悦、リルケ、開高健の言葉や、書き下ろし「ものたちの誰彼」も収録されています。

なにも刷られていない鼠色の本体に、一枚ずつ写真を印刷した薄い紙を挟み込んでいくことも、じぶんたちの手で行いました。すべて手作業なので、ひょっとすると同じ写真が2枚入っていたりするかもしれません。当たった方は、ラッキーということでお納めください。万が一、写真が1枚足りない、という方がいたら、すみやかにご一報ください。

そこに美しさをみる目がなければとっくに捨てられていたようなフラジャイルきわまりないものたちが、シリンダーにそっとおさまりました。

This is an artist book by photographer Akio Tomari, who has took only glass subjects in his unique worldview of “Kuchikeru”. The book comes in a paper tube that looks like it might contain a glass bottle, and the large plain book is interspersed with 35 photographs.

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編集後記

はじまりは、2023年の立春ごろだったでしょうか。

「泊さん、ガラスの本を作りませんか」と、勢い半分の乱暴なご相談に、即答で「あ、本、作りましょう」とお返事をくださって。

その後、まだこっちはどんな本にしようか、とあれこれ考えているうちに、じぶんの足でどんどん各地の古道具屋を訪ね歩いては「この様な見つめ方、ありですか?」とか「入り口が少し欠けていて綺麗でした」とか「もう少し撮ってみます」といって私信のように写真が届く日々がはじまりました。

そうして集まってきた被写体は、みんな壊れたり、痛んでしまって、もとの用途では使えないガラス製品ばかり。すべて泊さんが選んだものです。いくつか櫛田の私物も混ざっていますが、どれも泊好みのものたちで、「ものに力が無いと、いい写真はできない」と、断言していたこともじんわり印象的でした。

デザインは、泊さんが全幅の信頼を寄せている太田江理子さん。かつて、太田さんが副田高行さんのところに身を寄せていた時代からの仕事仲間で、一見物腰は柔らかそうで、そのじつ折れない芯があって、きっちり仕事をやりきるタイプ。今回は、泊さんから「もっと不良になれ」という、ふたりにしか分からない言い方で、本人には心当たりがありそうな助言が途中途中あったようで、四角四面の枠からちょっとはみ出したデザインの工夫が散りばめられています。

ところで、本書のタイトルにもなっている「クチケル」は、泊さんと雑談しているときに、泊さんの口からポロッと出た言葉でした。はじめて耳にする言葉で、その場で意味や語源を引いてもどこにも載ってないので、きっと言い間違えか、鹿児島のふるい方言かとおもっていましたが、あんまり堂々となんども言うものだから、いよいよ面白くなってきて「く・ち・け・るで合ってます?」と聞くと、まだスタイリストの仕事をしていた駆け出し時代に関西で使っていた言葉なのだとか。「ちょっと欠けたくらいのもの」を指す符牒なのだそうです。

不完全なものの美、この見方でガラスをみつめること自体がおもしろい、と感じました。およそ四千年前から使われてきた素材なのに、ガラス製品はよっぽどのモノじゃなければ不完全のまま残されることはありません。ちょっとチップしたくらいで、すぐに危険物のレッテルを貼られ、不燃ごみになるか、リサイクルの日に出されていってしまう。そんな、きわめてあやうい存在の、古いガラスのオブジェだけで一冊をつくろうではありませんか、と意気投合。

本のタイトルは「クチケル」に決まり、通常版とあわせて特装版も用意することになり、本を空間にひろげる写真展の開催も決定。「ものたちの誰彼(たそがれ)」展として、2024年2月2日から3月25日まで、無印良品銀座の6FにあるATELIER MUJI GINZA Gallery2で開催されます。どうぞお運びください。

こわれやすい本をたいせつに扱いたいFRAGILE BOOKSとしては、いかに「クチケル」をテーマに本を拵えるか、練りに練りました。通常版では、医療用ガーゼを表紙の装丁に使用しました。こんなやさしい手触りの本はないのではないかな。特装版では、無地の大型本に通常版未収録の写真を含む35点の写真を挟み込んでいます。本に直接印刷しなかったのは、綴じた紙の束(無地の本)を緩衝材のように仕立てたかったからで、それを丸めてガラスのボトルが入っていそうな紙の筒に入れました。手が掛かるので300冊しか作れないけれど、こわれものをそっと取り出すようにして、クチケル世界を体験してもらえたらと思います。


櫛田 理



Profile


泊昭雄  / Akio Tomari

フォトグラファー。1955年 鹿児島生まれ。インテリアスタイリストを経て、1993年 フォトグラファーとして独立。2001年ギャラリーWALL 南青山設立に参加。2004年 季刊誌「hinism」を創刊。2007年 モノクロマガジン「nagare」、2018年「hinism vol.10」(AXIS社)、2020年「hinism vol.11」(wall社) 発刊。広告写真、写真集などを手掛け幅広く活躍し現在に至る。

https://www.littaitomari.jp/

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