モスクワ藝術座
Bibliographic Details
- Title
- Moscow Art Theatre / モスクワ藝術座
- Author
- Freidkina / フレイドキナ
- Translator
- Gitaro Ujo / 馬上義太郎
- Editor
- Takashi Hosokawa / 細川隆司
- Publisher
- Mirai sha / 未来社
- Year
- 1952
- Size
- h182 × w127mm
- Weight
- 100g
- Pages
- 112 pages
- Language
- Japanese / 日本語
- Binding
- Softcover / ソフトカバー
- Condition
- good(Binding has partial burning. / 装丁の部分的な焼けあり)
ロシアの舞台芸術史における
もっとも偉大な出来事。
「新しい演劇の胎動」が書かれたP17の左上、天と小口におおきく開いた福耳。このページには、劇作家のウラジーミル・ネミロヴィチ=ダンチェンコが、文学的劇場をつくる空想の際に書いた「劇場と文学の接近が幸福な未来の擔保なのだ。」という言葉が記されている。本文用紙は、まるで焼きたてのパンのような焼け具合。縁側はこんがりとしており、内側はふっくらとして格別。経年変化からくるやわらからかさが美しく、惚れ惚れしてしまう。
本書は、ロシアに現存する劇場「モスクワ芸術座」の創設と発展について書かれた一冊で、演劇史においても重要な出来事が記録されている。モスクワ芸術座は1897年、俳優で演出家のスタニスラフスキーと劇作家のウラジーミル・ネミロヴィチ=ダンチェンコによって設立された。この劇場の存在は世界における演劇史の中でも、極めて画期的な事業として記されている。
モスクワ芸術座は、大衆に質の高い舞台を提供するという理念を掲げ、営利を目的とした運営から距離を置いた数少ない劇場であった。上演作においては、リアリズム演劇を推進し、その革新性で観客を魅了。『かもめ』『三人姉妹』『桜の園』といったチェーホフ作品の上演を通じて、劇場はリアリズム演劇の新しい地平を切り拓いた。本書中では、これらの名作を支えた演出意図や舞台技術、観客との対話について詳しく述べており、それがどのようにこの劇場を文化の中心に押し上げたのかが、丁寧に描かれている。
著者であるフレイドキナは、この劇場を単なるロシア国内の一劇場としてではなく、演劇における社会主義リアリズムの創造の先駆者的存在として、創設から1950年頃までの軌跡を鮮やかに記録した。また、スタニスラフスキーが開発した俳優訓練メソッド「スタニスラフスキー・システム」について、またそのメソッドが現場でどのように活用されたかについても触れられている。さらに、ソビエト連邦時代の政治的・社会的変化の中でモスクワ芸術座が果たした役割についても論じており、その活動は演劇の枠を超え、社会的な意義や影響を持つものとなった。この劇場の歴史は、人類が舞台芸術を通じて社会や文化にいかに貢献するべきなのかを、教えてくれる記録である。
«目次»
一 新しい演劇の胎動
その前夜におけるロシア演劇
スタニスラフスキーと「蒸術・文学協會」の活動
ネミロヴィチ=ダンチェンコとその演劇美学
二 新しい劇場の誕生
「皇帝フョードル」と演劇の新風
藝術座とチエホフ劇
藝術座とゴーリキー劇
藝術座とシンボリズム藝術
創造のためのたたかい
三 革命と藝術
十月革命と藝術座
ソヴエト現代劇の創造
古典劇の新演出
ソヴエト演劇の勝利ー「敵」
第二のチエホフー新人の活動
役の「第ニプラン」
「超課題」と「身体的行動の方法」
社会主義リアリズム演劇の確立
演劇の未来を擔う劇場
あとがき