Old Paper

Bibliographic Details

Title
Old Paper
Designer
Hideyuki Saito / サイトヲヒデユキ
Images
Photo by Onuma Shoji / 大沼ショージ
Publisher
Atiburanti Classiky / 倉敷意匠アチブランチ
Year
2012
Size
h245 × w140mm
Pages
64 pages
Language
Japanese / 日本語
Binding
カバー:活版印刷/本体:天アンカット

本の上部を
裂いて読む写真集。
秘仏を御開帳するように。

倉敷意匠が2012年に企画した「祈りの紙々展」の記録を大沼ショージが撮り下ろした写真集。装丁は、サイトヲヒデユキ。

主題が「古い紙モノ」であることから、書物の装丁をオーダーメイドしていた古き良き時代にならい、仕上げ断ちをしない仮製本の状態になっている。本の上部がアンカットのまま裁断されていないので、袋の内側に書かれた本文(写真の解説)を読むためには、ペーパーナイフなどで本の上部をカットしないといけない。わざわざ切らないと読めないので、手間はかかるけど、手触りをだいじにする倉敷意匠らしい制作意図でもある。ザラザラしてないと、倉敷意匠っぽくはない。しかも、本文用紙にはあえて繊維が長い紙を使用していて、裂くと毛羽立ちやすい。切り口がボソボソした風合いになる。ぼくは、なんだかもったいなくて、切らないままでいた。

内容は、西洋のものでは15~16世紀の時祷書、グレゴリオ聖歌、活版印刷創世期の印刷物など、日本からは平安時代から鎌倉時代にかけて作善業として作られた印仏(いんぶつ)、江戸時代の護符などが、展示風景の写真とその紹介文とあわせて収録されている。いずれも、祈りを託した「いにしえの紙々」といった内容で、数百年のときを超えてだいじに受け継がれてきた「紙もの」が登場する。

独特のアンダートーンの写真は、大沼ショージ。絶対秘仏ないしは厨子のなかの神仏と対面するかのような、神妙な心持ちになる。薄暗がりでこそ、もの本来の姿があらわれる、とも思わされるし、暗くないと見えない世界があるとも思わされる。鎌倉考古学研究所の発掘団員として出土品の撮影に関わったことがきっかけでカメラマンになったという来歴も面白い。全国の銭湯をドキュメントした『二十世紀銭湯写真集』(監修町田忍、序文藤森照信)や澄敬一と松澤紀美子ご夫妻の著書『1×1=2―二人の仕事』を撮り下ろしたカメラマンである。最近では琵琶湖の畔で野菜を育てる廣部里美さん(百菜劇場)を一年かけて撮りつづけた仕事が印象的だった。ちなみに、彼女が育てるお米は、とてもおいしい。



Text by 櫛田 理


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