Paper Study Pieces 2
Bibliographic Details
- Title
- Paper Study Pieces 2
- Artist
- コイズミアヤ / Aya Coizumi
- Size
- h36 × W97 × d25mm(外箱 h50 × w165 × d120mm)
- Weight
- 0.1g 以下
- Materials
- 方眼紙、フィルムプラスト(中性紙テープ)
- Edition
- 5
- Condition
- New / 新品
翅よりも軽く
角砂糖よりも小さな
箱の立体模型。
ブルーの方眼紙で造形された「重なる箱」のミニチュア立体模型。紙と紙テープだけで作られているため、小さく、翅のように軽く、繊細なつくりです。特製の木製函に収められています。
«Paper Study Pieces 2»は、《しくみの内側のしくみ II》の制作の前段階で確認のために作った紙模型を作家が気に入り、アトリエにずっととってあったのを、フラジャイルブックスのために特別に再制作いただいたものです。
Paper Study Piecesシリーズに取り組んだきっかけは、建築の継手と仕口を手掛かりに取り組み始めた«しくみの内側のしくみ II»。この制作プロセスの中で、今回とほぼ同じ小さなサイズの模型を作っていたそう。しくみの内側のしくみシリーズは、作家のひとつの大きな転換期を象徴する作品です。それまでとは異なる、新しい作風へと入っていく過程で、原寸よりもかなり小さな紙の立体模型を作り、その姿を客観的に考察されていたとか。
本作はこの小ささ、そして紙というメディアの特性上、作品を平面化した(箱が広げられた)展開図をつくり、折り紙のように箱の造形を立ち上げたそうで、この制作過程は、作家にとっても楽しい体験だったと語ってくれました。
通常、木板を使用する造形作品の制作過程は、まず、平面図そして立面図を面と面から立ち上がる姿を想像しながらPC上でつくるところに始まり、次に、製図を元にパーツごとに紙型を用意し、紙型に沿って木材のパーツを一つひとつ切り出し、最後に、木材のパーツを接着剤を使用し、手で組み合わせるのだそうです。
CADなどの3Dソフトは使わないのは、目の前で物理的に起きていることと"出会って"いくこと、あくまでも"手と頭で理解をしていく過程"を大切にしたい、という考えがあってのこと。これは、緻密な作品の中に、作家の身体感覚が内包されていることを垣間見られる、興味深いエピソードであり、そのプロセスを目の当たりにできるのがPaper Study Piecesシリーズの醍醐味です。どれほど数値が正しくても、木材の状態や特徴、気候によっても微妙な差異が生じるため、最後は手の感覚で整えていくのだとか。
個人的には、昔大好きだったおもちゃ、大切にしていた文庫本にも近い、不思議な懐かしさをも覚えます。月日を重ねながらやつれていく姿までもが楽しみな作品です。
Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS)