しくみの内側のしくみ I

Bibliographic Details

Title
しくみの内側のしくみ I
Artist
Aya Coizumi / コイズミアヤ
Year
2011
Size
h192.5 × w492 × d161mm
Weight
3kg
Materials
Wood / 木
Edition
Unique
Condition
New / 新品

継手と仕口によって
境界を曖昧にしたこの箱は
名建築である。

日本建築の継手と仕口のように、いくつかの部分に分かれた箱が絶妙に組み込まれている六面体のオブジェ。長辺を左右にスライドすると、内臓部分が切り離れて、隠れていた部分が露わになり、それをさらに展開していくと、モダン建築か列車か汽船か、はたまた物語のはじまる気配がする不思議な立体空間が出現するという仕組み。

コイズミアヤの大傑作 «しくみの内側のしくみ Ⅰ» をご紹介します。«しくみの内側のしくみ Ⅰ»が生まれたきっかけは、古くから日本の木造建築に使われたきた釘を使わない接合技法の「継手」と「仕口」との出会い。継手と仕口の考え方で、幾重にも箱を組み上げるという探求が、ここにはじまりました。

外側のかたちと内側のかたち。内側を考えて、外側を考え、外から内を見て、内から外を見る。そのせめぎ合い、その行ったり来たりの中からしか作品は生まれてこない、と。

箱のなかに構造物を収めた初期作品群から、この時期には、ウチとソトの境界がどんどん曖昧になり、階段や書架など「物語がはじまりそうな気配」も意図的に組み込んだ作品を制作しています。しかも、箱をどう展開するか次第で、いくつもの物語が生まれるという可変性は、読み手によって中身も可変しえるという本の持つやわらかい時空を想起させるものです。この作品がのちに「重なる箱」シリーズに発展していくことになります。


Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS)