ともお君のスケッチブック

Bibliographic Details

Title
Child's Sketchbook / 児童画スケッチブック(2冊セット)
Artist
Tomoo 8 year old / ともお君 (東京在住 当時小学2年生)
Images
21 drawings in each volume / 各巻21点 収録
Year
Around 1965 / 1965年前後
Size
w330 × h414 × d10
Weight
Book 1= 780g / Book 2= 840g
Language
Japanese / 日本語
Binding
Ring-bound sketchbook / リング製本スケッチブック
Materials
Watercolor, pastels, felt-tip pen / 水彩、パステル、サインペン
Edition
Unique / 1点限り
Condition
Good / 並 ※一部用紙の欠けやシワあり

画家は、ともお君。
小学校2ねんせい。
なんだか素朴でいい絵です。

「3人兄弟が子どものころに描いた絵があるんだけど」と、親しい友人から連絡があり、児童画を送ってみてもらうことにしました。到着したのはみかん箱で2箱分。最近では珍しい大量です。箱には教室に張り出されていたらしい痕跡が残る個別の作品と、スケッチブックの状態で残されている作品とがほぼ半々、詰められていました。

一点ずつ見ていくと、これが幼いながらそれぞれの個性が際立つ良い絵なのです。なるほど、この絵を手掛かりに、幼かった子どもたちそれぞれの、忘れかけていた小さなエピソードまで、鮮明によみがえるだろうと、そう思わせるなにかがありました。
 
数百点に上る個性的な絵のなかでとくに目立つのは、画面からはみ出さんばかりに勢いよく描かれてた一群の作品です。描き手の名前をみると 「ともお」とあります。スケッチブックの記載によれば、当時は小学校2年生。水彩絵の具を油絵のように厚く重ねて描いた重厚な鉄人28号の肖像、マチスの「ダンス」を感じさせる花の絵、三次元の物体を二次元に落とし込むという難易度の高い技をすでに我が物としていたかのような自動車の絵など、例示はごく一部に留めますが、ともおくんの作品にはいく度も「うまい!」と唸らされました。
 
今回ご紹介する「今週の一冊」は、ともお君が描いた絵のなかでも、とくに粒の揃った作品が収められているスケチブック2冊です。

鉄人28号が描かれていること、大首絵 (ともおくん、写楽を知っていたのか!?) を思わせるオバQ(オバケのQ太郎)の肖像画があること、小学2年生で丑年の年賀状の図案を描いていることなどから推察して、このスケッチブックは1965(昭和40)前後に描かれたものと思われます。昭和のまっただなか、まだまだ戦後の空気が色濃く残る時代です。お正月には東京でも、空き地や公園で凧をあげる風景がそこかしこにみられた牧歌的な時代でもありました。ともお君の眼は、そうした風景をしっかりとらえています。
 
作品の対向ページには、ガリ版で刷った「課題」が貼り付けられているほか、指導者の寸評が記されています。それぞれの絵が何らかの指導に基づいて描かれたものであることがわかります。課題のなかには、「たらしこみ」による抽象表現やクレパスによる「スクラッチ(ひっかき絵)」、転写、サインペンだけを使って描いてみるといった新しい技法の習得も織り込まれています。ともお君の絵に対する評価はもちろんどれも上々。「たいへんよくできました」のかわいいスタンプが押されているのも、ともおくんにとっては嬉しかったことだろうと思います。
 
ところで、たとえ良い絵でもだれが子供の絵を買うんだ、と疑問に思われる方がいても無理はありません。しかし、児童画はその時代を子どもたちが無心にうつした貴重な史料なのです。教育の質、社会や家庭内の状況を反映するものもあれば、大人の目のくもりを払拭してくれる素直で伸びやかな作品もあります。記憶と記録と、たくさんの意味を抱きながら、転居や進学、子どもの独立など、いずれかのタイミングで廃棄されてしまうことの多い児童画には、どこからともなく求める方が現れ、いつの間にか売り切れてしまうということを経験してきました。例えば、戦闘機や軍艦が描かれた戦時中の児童画は、歴史研究者にとっては喉から手が出るほどの逸品なのだとか。
 
時はまさに夏休み。一年のなかで、子どもの描く絵をもっともよく目にする季節かも知れません。故郷に帰る大人たちにとっては、もしもむかしのスケッチブックが残されていれば、幼かった頃の自分とその時代を見つめ直してみるのも一興かと思います。


Text by 佐藤真砂


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