日本好色藏票史

Bibliographic Details

Title
The History of japanese erotic ex-libris / 日本好色藏票史
Author
Shozo Saito / 斎藤昌三
Editor
Shozo Saito / 斎藤昌三
Designer
Masakatsu Naito / 内藤政勝
Director
Publisher: Masakatsu Naito / 発行人: 内藤政勝
Images
Woodblock-printed ex-libris by Shiko Munakata, Seifu Tsuda, Koshiro Onchi, Junichiro Sekino, Kigen Nakagawa... etc. / 棟方志功、津田青楓、恩地孝四郎、関野準一郎、中川紀元、等の木版画蔵書票を多数貼込。
Publisher
青園荘 非売品
Year
1947
Size
h257 x w203 x d15 mm
Weight
660g
Pages
46 pages
Language
Japanese / 日本語
Binding
pouch-binding / 袋綴じ
Edition
Limited edition of 250 copies / 限定250部

【表紙蔵票】恩地孝四郎 【扉蔵票】澁谷於寒 【装幀】(案)内藤政勝/(作)関野準一郎/(摺)石井五市 【作票】(創作木版)関野準一郎/(摺補助)石井五市/(伝承木版)平井孝一/(エッチング)関野準一郎/(孔版)若山八十/(凸版)東京プロセス社 【造本】内藤政勝/(補助)諸伏梅次

本文のところどころに
空白地帯を残し、
未完のまま届けられた本。

本書は、装幀家の内藤政勝がお膳立てし、自ら造本して個人出版社「青園荘」から刊行した非売品。筆を執ったのは、本書に先じて『蔵書票の話』や『日本の古蔵票』を上梓していた斎藤昌三。テーマとしたのは、日本の好色蔵書史。

はたして、ページをめくると、それほどエロチックではない。昭和22年の本であるから、この辺りがギリギリの線だったのかもしれない。ただ、子安貝や暖簾を図案化した蔵票デザインなどは、むしろおおいに洒落ていて、小さなプロマイドのような世界に、鈴木春信風や山東京伝風の、エクスリブリス(Ex Libris)も多数登場する。なんといっても装幀がすばらしい。

この本が面白いのは、図案デザインの希少な資料という点だけではない。じつはこの本は、完成しないまま届けられたのだった。

本文をよく見ると、文字組みのあいだに別刷りの図版を貼り込んでいる。内藤は、これを売らないのに250部も手製本することにした。ちょっと狂っている。ただし、時間の見積もりは苦手だったのか、案の定、図版の貼り込みが間に合わなかった。それで、勢い「後で届けます」というお詫び状を挟み込み、貼られるべき箇所を空白にしたまま、刊行した。

本書は、間に合わなかったことのお詫び文と、後になって届けられた「未綴じのエクスリブリス」が付属した完品ということになる。
発売を遅らせる、という選択肢はなかったのか、いまとなっては分からないが、ここには、空白の地帯と、事の顛末を想像するたのしみが残されている。



Text by 櫛田理

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