THE WORLD THROUGH LENSES
Bibliographic Details
- Title
- THE WORLD THROUGH LENSES
- Author
- Shotaro Shimomura / 下村正太郎
- Images
- Shotaro Shimomura / 下村正太郎
- Year
- 1935
- Size
- h180 × w230 × d58mm
- Pages
- 36
- Language
- Japanese / 日本語, English / 英語
- Binding
- バラ(綴じなし)、木箱入
- Printing
- 写真オリジナルプリント
- Materials
- 木、グラシン紙、感光紙
- Condition
- Good
本体日焼けアリ
大丸百貨店11代当主
下村正太郎の世界一周旅行
1934-1935
手彫りのレリーフをあしらった立派な木箱に収まる写真のオリジナル・プリント36枚。箱の蓋の内側に貼り付けてあるラベルにはタイトルと「SOUVENIR PHOTO SKETCHES OF SHOTARO SHIMOMURA'S TOUR ROUND THE WORLD 1934-1935」というサブタイトルの記載があります。下村正太郎は明治16(1883)年生まれで後に大丸百貨店の当主となる第11代下村正太郎その人と見てよさそうです。 オリジナル・プリント36枚から成るこの写真集は、昭和9~10(1934~1935)年に視察も兼ねて世界一周の旅に出た下村が、自ら撮影してきた写真をおみやげがわりにして、きみー国挨拶の際などに関係者に配ったものとみられます。
タイトル題箋を全く同じくしながら木箱をタトウ紙へと軽量化し、写真点数を12点まで絞り込んだ別ヴァージョンも存在するようで、今回入荷した木箱ヴァージョンは、より限られた重要な関係者にのみ配られたものではないかと思います。
写真には全点、地名と被写体とを記載した薄紙がかけられており、少なくともフランス、イギリス、スコットランド、フランス、イタリア、オーストリア、スイス、オランダ、デンマーク、北米各地、エジプト、インド各地と、広汎な国々へと赴いたことが分かります。
写真の腕はなかなかのもの。画像では質感まで伝わらないので大変残念なのですが、風景の切り取り方と構図、白と黒とのコントラスト、視線を向けた先の対象物など、確かな写真の腕と優れたセンスが光ります。店舗や私邸の建築にヴォリーズを起用したのは下村の意向だったとされますが、なるほどそれも充分頷けるお話し。
アメリカのメーシーやワナメーカー、パリのボンマルシェなど、百貨店の写真でさえ - 記念品・おみやげとして写真を選んだ結果なのかも知れませんが -いかにも説明的な視察写真といった体のものが1点もないのは見事。百貨店関係資料を離れ、昭和初期のアマチュア写真家の作品集、或いはモダニズム関係資料として、或いは福原信三との比較や実業家の渡航体験などなど、さまざまな捉え方が可能な写真ではないかと思います。
Text by 佐藤眞砂