隣の部屋 書庫

Bibliographic Details

Title
隣の部屋 書庫
Artist
Aya Coizumi / コイズミアヤ
Year
2009
Size
h200 × w163 × d293mm
Weight
1.24kg
Edition
Unique
Condition
New / 新品

遠くにあったはずのものが、
壁を取り壊したら、
ずっと隣り合わせだった。

背中合わせの二つの空間に、姉妹のようにそれぞれ茶色い書庫と階段がそっと収められています。それらは好きなように着脱できて、外に取り出せば、白い建てものには美しい抜き型が残される。この作品で作者がもっとも大事にしたのは、背中合わせのあいだで、両側を隔てているように見える壁でした。

ずっと箱が作品のモチーフですが、ふと“壁”の存在が気になったんです。箱という閉じた形も、平面の展開図では遠くにあった面と面が、実際に組み立てると、隣合わせになります。例えば、家のパントリーと書庫は、廊下によってつながっているのに、実際は壁一枚で隣り合わせになっている、ということがあります。遠いと思っていたもの同士、壁で隔てられていただけで、じつはとても近かった、ということが面白い、と思ったんです。それは、アタマの中の思考や認知のプロセスにも似ています。

                        ーーコイズミアヤ


遠くにあったものを、立体に組み立てると、隣り合わせになるという箱づくりの特性に着目した本作は、コイズミアヤの詩情と思索をもっとも端的にあらわしている名作です。

ノヴァーリスもこう語っている「すべて、見えるものは見えないものに、聞こえるものは聞こえないものに、感じられるものは感じられないものに付着している。おそらく、考えられるものは、考えられないものに付着しているだろう。」と。

Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS)