未完のバッグ

Bibliographic Details

Title
unfinished vinyl bag / 未完のバッグ
Artist
Anonymous / 作者不明
Year
Showa era / 昭和期
Size
h265 × w350 × d20mm
Weight
240g
Materials
vinyl cord / ビニール紐
Condition
Some parts have scratches and are discolored. / 一部汚れがあります

完成まであと少しで
編むのを止めた
ビニールのかばん。

ビニール紐には、つい目をやってしまう性分です。絹糸のような色をして、額の裏の紐として、梱包材として、いろいろな場面で使われている、なんてことはない紐ですが、とくべつ探しているわけではないのに、知らぬ間に忍び寄ってきたりします。

品質上、最近のもののように、もとから白くはなかったのでしょう。それに時間の経過で日焼けをして、あるいは劣化してこのような絹色になっていったのだと思います。よい色をしています。

このバッグは、昭和のビニール紐100パーセント。その上、玉紐につながったままの未完成。しかも、完成まであと一歩というところで手を止めています。 単純なぼくは、「途中で飽きちゃったのかな?」と作者に自分を重ねてしまうけれど、そうでもないのかもしれません。

どんなのっぴきならない理由があったのか、ただ完成させたくなかったのか。意図的な演出だったら面白いなぁなどと、ぼくは翻弄されています。 これは、未完のまま手を止めた作品として、とめどない物語を想像させる装置と化しているのです。



Text by 都築重則

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