VARIATION / 水津達大

Bibliographic Details

Title
VARIATION
Artist
Tatsuhiro Suizu / 水津達大
Editor
Director + Editor + Publisher: Osamu Kushida / 櫛田 理
Designer
Nobuhiro Yamaguchi + Ippei Tamai / 山口信博+玉井一平
Images
Photo by Yosuke Otomo / 写真:大友洋祐
Publisher
FRAGILE BOOKS
Year
2025
Size
h257 × w182 × d20mm
Weight
500g
Pages
180pages
Language
English & Japanese / 日英対訳
Binding
thread-sewn binding / 糸かがり
Printing
2C offset printing in black and silver/ 墨と銀の2C オフセット
Materials
Main paper: b7 Bulky 4/6 90.5kg, Cover Paper: Star Dream Silver 4/6 88kg, book jacket: MBS Tech #100 Sleeve paper: bulky ball (white) 270g/㎡ / 本文用紙:b7バルキー 46判 90.5kg 、表紙用紙:スタードリーム シルバー 46判 88kg 、カバー用紙:MBSテック #100 スリーブ用紙:バルキーボール(白)270g/㎡
Edition
Limited edition of 500 copies / 限定500部 , Edition number 1 to 15 are Special Editions with box / 内、1番から15番までは特装箱付きのスペシャルエディション
Condition
New
ISBN
9784909479075

Foreword: Takashi Hiraide, English translation: Futoshi Miyagi, Editorial assistant: Ichika Tagawa, Box design for special edition: Akie Tsuzuki, Bookbinding advisor: Manabu Iwase, Printing director: Norio Kobayashi, Printing: TOPPAN Colorer Inc., Binding: Shinnihonshikou co.,Ltd / 序文:平出 隆、翻訳:ミヤギフトシ、編集協力:田川いちか、特装箱:都筑晶絵、造本協力:岩瀬 学、プリンティングディレクター:小林則雄、印刷:TOPPANクロレ、製本:新日本紙工

ひびやにじみが景色になるなら
風景を描かずに風景に至ることも
できるはずだ

金属的な光がひろがる。細胞のような、粒子のような、染みのようでもある極微の単位が、打ち重なっている。だが細胞でも、粒子でもない、染みというのでもない。不規則に見えるが、律動をもっている。この絵画は徒らにゆくてを指すこともなく、過去を引き摺ることもしていない。

平出隆
(本書序文より)

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日本画の画壇を離れ、あたらしい境地を拓きつつある水津達大の初作品集。墨とアルミニウムだけで描いた連作絵画「Khora (コーラ)」から、80点の作品を原寸大で収録しています。詩人で散文家の平出隆が序文を寄せ、グラフィックデザイナーで俳人の山口信博が装丁しています。

発行部数は限定500部。全てにシリアルナンバーが入ります。その内のno.1からno.15までは、造本家の都筑晶絵が仕立てる特装箱にオリジナル作品と本が入るスペシャルエディション。


本書に至るまでの背景を、水津さんに聞きました。



ーーーこの連作絵画のはじまりには何がありました?

はじめに、風景がありました。文化や歴史を内包するモチーフとして、風景を描くことは魅力的な題材でした。それがしだいに重力に起因する画面構成に不自由さを感じるようになってきたんです。

ーーー重力からの解放、ですか。

どうしたらそれができるのか。じぶんなりの方法を探して試行錯誤しました。それで、写実的な実景描写から心象風景へ、さらに開かれた作品をもとめるようになりました。

ーーーひびもにじみも風景である、のような?

はい。もともと日本人は茶碗の肌とか墨の滲みのなかに景色を見い出してきました。そういう人為を超えた偶然性の裡にこそ、名状しがたい美を感受してきたはずです。そうであれば、風景を描かなくても風景に至るはずではないか。そう考えるようになりました。

ーーー画家である自分の首をしめかねない発見ですが、よくぞそこで筆を置かずに「Khora(コーラ」を立ち上げましたね。

絵を描くことの本質は、その「対象」ではなく「描き方」にこそあらわれる。またそうだとしたら、描くという行為だけが残ればよい。そのことに気づいたんです。

ーーーそうなるとその風景には特定の「場所」もいらない。

もう具体的な場所に起因する空間を描く必要はなくなりました。私はこの流れをTopos (トポス=具体的な風景)からKhora (コーラ=行為によって生成される場)への変化として捉えています。

ーーー連作絵画のタイトルにもなっている「Khora」は、プラトンが宇宙開闢論『ティマイオス』で使用した言葉で、すべての誕生の母のような場のことですね。

古代ギリシャ語に由来する言葉で、主客未分の状態のことでもあります。つまり、わたしとわたし以外のあいだに分断が無く、主客が融け合った状態のことです。

ーーー音楽をぼおーっと聴いている時みたいな?

そうですね(笑) 日本では西田幾多郎の場所の論理があったり、東洋思想とも本質的な共通項があります。そこに取り組むべき絵画空間があると直観しました。画材は、近代化によって大量生産が可能になったアルミニウムと東洋の伝統的素材である墨だけ。それを中国の筆法によって繰り返し重ねています。

ーーー意図しない墨筆の跡が、画面の隅々まで埋め尽くしています。

見るときの角度や明暗によっても景色は千変万化します。対峙する心のありどころによっても無数のバリエーションが生じます。そうした不連続なバリエーションによって、洋の東西、文化と文明、個別性と全体性といった二項が溶け合っているのです。

ーーーこの本にしても、幾度の変更を経て、不連続なバリエーションが生まれました。

初作品集がこのような形になって、よかったです。まさに、風景のような本になりました。



商品のお届けについて
7月中旬から順次発送を予定しております。発送の目処が立ちましたら、ご購入いただいたお客様にメールにてお届け日時のご連絡をさせていただきます。

◉商品について
本商品のスリーブケースには、長繊維古紙を含んだ用紙を使用しております。素材の個性により、それぞれ異なる表情をおたのしみください。


著者プロフィール

水津達大 / Tatsuhiro Suizu
1987年広島県生まれ。2013年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修士課程日本画修了。「国宝 伴大納言絵巻」模写事業に参加(2013)。大峯奥駈修行満行(2016、2018)。主な個展に「蹤跡」(圓徳院、2025)、「曾遊」(日本橋三越本店、2022)。

 

 


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